ヨシュアのGeek Diary in Board Game & Metal

趣味に関する個人的感想をだらだら書いていくブログです。

Bluetooth aptX LL で完全無線演奏は可能なのか? ~理論編~

おはこんばんにちは。ヨシュアです。

BluetoothってBlu-rayのノリでBlutoothって書いちゃうこと多くないですか?

私は頻繁すぎてBlu-toothとタイプしてしまったことすらあります。

 

タイトルは検証っぽいですが、まだ何も買ってないす。

机上計算とシミュレーションを行いました。

 

 

初めにBluetooth aptX LLとはなんぞやと説明させていただきます。

知ってるぞという方はレッツスクローーール

 

Bluetooth aptX LLとは?

Bluetooth aptX LLはBluetoothという規格とaptX LLという規格を合わせたものです。

 

aptXとは?

まずLLを無視して、aptXとはQualcomm社によるコーデックの一種です。

コーデックとは音声をどうやってデジタル化したものかという手法の名前と考えてもらっても差し支えないです。

mp3とかもコーデックの一種です。もちろん音声だけじゃなくて画像のjpegとか動画にもコーデックと使われます。

ただし、aptXはQualcommのICチップを使わないと実現できないので、Qualcommの一つの技術名ブランドと思ってもいいです。例えるならラーメン屋(Qualcomm)の秘伝のタレ(aptX)です。

 

Bluetoothとは?

ではそもそもBluetoothとは?

通信規格の一種です。規格というのはある一定の水準を満たすものに与えられる名称です。これを名乗っていいという屋号みたいなもんです。

Bluetoothはある通信方式を基にした技術に与えられた規格の名前です。

家系ラーメンという名前と同じです。豚骨醤油のこってりしたスープにコシのある太麺にチャーシューやほうれん草やにんにく大量が乗ってて、ご飯をサイドに付けられたりしたら家系ラーメンと名乗っていいですよみたいな感じです。(内容は偏見だし、実際の”家”系の歴史はもっと複雑らしい。)

 

WiFiも同じく通信規格の名前です。

 

--技術的余談--

具体的に言うとBluetoothはFHSS (Frequency Hopping Spread Spectrum)という通信方式を採用していて、FHの文字通り、通信する周波数(=ラジオのチャンネルみたいなもん。テレビも同じです。)をホップするように飛び回って通信しているのです。SSはこれ系のいろいろ周波数使うやつに付けられがちな名前です。WiFiもDSSSと言って使ってます。

これによって、耐ノイズ性だったり、秘匿性だったりが上がります。

 

Bluetoothの場合は2.402GHzから2.480GHzを1MHz単位でチャンネルに区切っていて、

そのチャンネルを0.000625秒=0.625ミリ秒=625マイクロ秒で移動しながらデータを伝送しています。

テレビで例えると、1から79まであるチャンネルをリモコン操作で一定のパターンで625マイクロ秒毎にチャンネル変更してやると一つの番組が見れるみたいな感じです。

 

このチャンネルを切り替える一定のパターンを送信側と受信側で口裏合わせしておくのが”ペアリング”です。

 

すごいこと考えますね~

ちなみにこの方式の原案を考えたのは女優と音楽家の二人組です。さすがです。

--終--

 

aptX LLとは?

話をaptXに戻して、

じゃあLLってなんですか?

となってると思いますが、LLとはLow Latencyの略です。

aptXというコーデックのLow Latencyバージョンのコーデックです。

 

文字通り遅延が少ないんですね。

Bluetoothで送った時に遅延が少なくなるようにうまくやっているのです。イメージとしては、かつてはある程度溜めてまとめて送ってたものを、こまめに送ってる感じですね。

なので、もちろん送信側だけではなく受信側もaptX LLに対応している必要があります。

新しい時代の仕事のやり方は古い人にはできないんです。

 

 

すなわち、

 

Bluetooth aptX LLとは通信規格コーデックの複合名で、家系ラーメン(Bluetooth吉村家Qualcomm秘伝のタレ(aptX)低脂質スープ用(LL)みたいなもんです。

 

 

伝わった方も伝わらなかった方もとりあえず読み進めていただけたら幸いです。

 

もちろんBluetoothにも後ろに4や4.2や5などの番号がついたり、class 1,2,3とあったりいろんな規格がありますが、スベったショックによりここでは割愛。他のサイト見て。

 

 

 

Bluetooth aptX LLの遅延時間検討

 

さてここからが本題なのですが、今までも電子楽器を無線で鳴らそうという考えはされてきました。

 

そもそも人間が耳で音楽を聴くのもある意味無線通信ですね。ドライバーの物理的な振動で空気という媒質を変化させて、それを耳で感じ取るなんてまさしく変調と復調じゃないか!

 

それはさておき、かつての技術では遅延時間がひどすぎて、まともに演奏できませんでした。

私はベースをやっていますが、ただのBluetoothヘッドホンでモニターしようとしたら頭が爆発しました。

 

それがBluetooth aptX LLで解消されるのか考察していこうと思います。

 

 

 

電子楽器(ここでは例としてギターやベース)を演奏する際に発生する遅延時間は下記で発生します。

ここでは例としてギターやベースをオーディオインターフェース(以下AI/F)につなぎ、そこからヘッドフォンでモニターするという経路を想定します。

 

①弦振動<=>ピックアップ

②ピックアップ<=>ジャック

③ジャック<=>A/IF入力(シールド)

④AI/F入力<=>AI/Fのヘッドホン出力

⑤AI/Fのヘッドホン出力<=>ヘッドホンのドライバー

⑥ヘッドホンのドライバー<=>鼓膜

 

 

バカみたいに羅列しました。

ここでの⑤以外はほぼ遅延時間を感知できないものとみなすので、感じる遅延は

⑤AI/Fのヘッドホン出力<=>ヘッドホンのドライバー

だけなので、それ以外はある程度読み飛ばしてもらえばと思います。

 

ここでまず、

Bluetooth aptX LLは規格上遅延時間は40ミリ秒未満と定められてます。

様々な要因によって多少変化はしますが、30ms台の結果が多いみたいです。

 

 

①については空気の振動が経路となります。ピックアップの性能によります。ピックアップに入ってるコイルの特性ですね。いわゆる音の立ち上がりという楽器の表現とほぼ同じです。

 

②については楽器内部の電気回路が経路となります銅線内を伝播する電気信号はほぼ光速と同じ速さなので、巡り巡って1mの配線があったとしても30万分の1秒ですね。わかるはずがない。

 

③もシールド内は基本的には光速に近いです。周波数が高ければ高いほど、そうはいかなくなってくるので、各電線メーカーはいろいろ研究を行ってます。ただし、今回の場合、使うのは20kHzまでの可聴域で遅延を論じるに値しない低周波数ですので、無視可能。

 

私の場合、ここで無線での伝送を行ってます。プロの方でもライブとかで使ってらっしゃいますよね。Bluetoothではありませんが、規格名はなく、実際にどれくらい遅延するのかわかりません。だた、現状不満はないです。

 

使ってるのはこれ

中華メーカーだけど不自由なく使えてます。

 

 

 

④はAI/Fによるかも。

基本的にはAI/Fは入力されたアナログ信号をデジタルに変換してUSBケーブルでPCに送ったりします。ヘッドホンも基本的にはデジタル信号をアナログ信号に戻して出力してると思います。

しかし私の持ってるAI/Fはヘッドホンのモニターボタンがありまして、これはアナログデジタル変換(AD変換)をバイパスして直接ヘッドホン駆動回路を回してる可能性も考えられます。

 

何が言いたいかと言うと、アナログ回路のみだったら、②と同じです。そうではなくデジタルに変換をすると、AD変換とその逆のDA変換にて数十マイクロ秒レベルの遅延が生じます。

その他にも内部でのデジタル処理もマイクロ秒オーダーのイメージです。

 

ただ、Bluetooth aptX LLの遅延時間に比べると十分小さいので、無視します。

 

⑤は有線の場合、シールドと同じで、無線の場合40msです。

 

⑥は音速ですので、鼓膜とヘッドホンの間隔が1,2cmだとして、約340m/sなので、68000分の1秒、すなわち15マイクロ秒程度なので、無視可能です。

 

 

 

すなわち総遅延時間は最大40msと言って差し支えないですかね。

さてここで、40msがどれくらいなのかを考察します。

 

まずBPMを定義を確認します。

BPM (Beats Per Minutes): 4分音符が1分間に何回鳴ってるか

 

すなわちN分音符1個分の長さをX”ミリ”秒とすると、

X [ms] =1000 * (60[s]/BPM) * (4/N)

となります。

 

これをわかりやすい値で出してみます。

例えば日本人に馴染みが深い速い曲であるX Japanの紅はBPM157で16分音符メインの音楽なので、

X=1000 * (60/157) * (4/16) = 95.5ms

すなわち、紅で16分音符が約半分ずれるということです。(32分ズレ)

 

 

うーーーーーーーーん。微妙。

わかるのかな・・・

 

 

本来、aptX LLという規格のターゲットはゲーム(音ゲーも)や動画で、映像と音声のズレが発生しないようにされてるらしいです。

 

 

なお、人間の認知限界は会話で50ms~100msとか、また別のYAMAHAによる研究で音楽で30msとか他の値も出ています。詳細は情報処理学会の論文を

(ソース:

https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/index.php?action=pages_view_main&active_action=repository_action_common_download&item_id=56015&item_no=1&attribute_id=1&file_no=1&page_id=13&block_id=8

)※PDF注意!!

 

 

そこで、検証をしてみました。

簡単のため、Tux Guitarというタブ譜ソフトを使い(DAWでもなんでもいいです)

①一小節16分音符でスケールを上昇させるギター音

②初めに32分休符を置いて、その後に16分音符でギターと同じスケール音を出すベース音(32分はみ出すので2小節目最初の32分小節にタイを置く)

の2つのトラックを作り、同時再生してみました。

(方法がわからないし、稚拙なので音源のアップロードはいたしません。1分ぐらいで作れるので気になる人はどうぞ。DAWならもっと自由度高く検証できるはず)

 

 

 

 

うん、違いわかるわ。

 

 

 

ただ少しの目をつぶれば家で曲に合わせて軽く弾くお遊びレベルとして使えなくもない。

ちゃんとした練習では使わないほうがいいですね。

しかも今回の検証は32分音符ずれで行ったので、時間にして47.7msです。

 

 

aptX LLはこれより遅延時間は短いので、まだ完全にナシでもないです。

 

そこで、遅延時間40msが32分音符に相当する時は

40 = 1000 * (60/BPM) * (4/32)

より

BPM=187.5になります。

そこでBPM188で同様に再生してみました。

 

 

 

まあわかる。

 

 

でもバンドも組んでない私なら使えますね。ただ遅延時間って重なってくので、楽器からAI/F間の遅延時間だったり、PCとAI/F間の遅延時間を足してしまうと使えないものになってしまうかもしれませんが。

 

ぶっちゃけ使ってもいいかなとは思いますが、万人に対して言うなら

 

結論:Bluetooth aptX LLで楽器は演奏できない!!

 

 

とでもしましょう。

 

いろんな検証材料を用意したので、気になる人は自分でやってみましょう。

 

 

完全に使えるのがわかったら、新幹線移動用も兼ねてこれ買いたかったけどこの結果じゃあなあ